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レースレポート:Ultra Tour Mt. Siguniang(四姑娘山) 2017 / 中国 四川省 チベットのトレイルレース

こんにちは、Go Asia Trail管理人の堤です。

中国 四川省 チベットで開催された Ultra Tour Mt.Siguniang(四姑娘山)に参加された日本人女性の方より、レース参加レポートを寄稿いただきました。

Ultra Tour Mt.Siguniang 2017に参加してきたので、その様子を報告します。

標高3230m〜4500mを舞台とした過酷なレース

中国の四川省チベット族自治州にある四姑娘山を舞台に、ウルトラトレイルワールドツアーの1つ、UTMSが11月4日(土)に開催されました。

このレースはスタート地点の日隆が標高3230mであり、最高到達地点は4500mになります。
カテゴリーは42.5km、50km、60km、100kmとなっており、それぞれコースが異なるため、走行距離だけではなく自分が見たい景色や行ってみたい山を選ぶ楽しみがあります。
完走率の低さから、最高到中国達地点が5000m以下となったり、50kmの部が新設されたりと昨年までのコースが見直されていました。今回、日本から参加したメンバーはそれぞれのカテゴリーに出場しましたが、レース前日に降った雪と高山病等のダメージを受け大苦戦を強いられる結果となりました。

UTMSに出場するにあたり、登山経験や高所で過ごした経験、トレイルランニングの走歴等の参加資格が問われます。日本人が普通に暮らしている中ではなかなかその条件をクリアするのは難しいと思いますが、私自身は、今回ご一緒させていただいた蚊取り線香さんのアドバイスにより高所のトレーニングを密かに積んでレースに臨みました。しかし、慣れない環境への不安と出場するからには絶対に完走したかったので、4つのカテゴリーの中では一番穏やかなコースと言われる50kmにチャレンジしました。

交通アクセス、受付、気候

日本からチベットへの入口となる成都までは、成田空港から直行便で5時間40分。会場までは車を手配していただき、途中標高4000mの峠を越えて4時間かかりました。富士山より高い道路を普通に車が走っており、さらに高い山を見上げる景色を眺めると言う、地球の雄大さを実感するドライブとなりました。スタート地点の周囲はホテルや食堂、お店らしき建物が忽然と現れます。何もない山の中でネオンサインが光る様子はなんとも言えず不思議でした。街中にはチベットらしく色とりどりの旗が張られており、可愛らしい家並みはスイスのグリンデルワルドを思い起こさせる素敵な風景です。

日が傾き始めた現地時間の18時30分にホテルに到着し、先発していたメンバーと合流しました。ちょうど夕食時で、入り口からすぐが食堂になっていたため宿泊者が一斉に食事をしている最中でした。ホテルで提供される食事は四川料理なので辛味のある野菜の炒め物が中心ですが、どれも美味しくいただきました。

食後に、ナンバーカードの引き換えをするため、ホテルから徒歩10分程度で到着するレース会場に向かいました。事前に聞いていた必携装備を持参したものの、案内が異なっていたようでスタッフにダメ出しをされるメンバーが続出。受付の順番の案内も違っていたことから暫く混乱する日本チーム。正しい順番は、

①参加同意書に署名をし提出することで名前とレースナンバーを認識。

②持参した診断書を提出し健康状態をチェック。必要に応じて血圧測定が実施される。

③必携品の確認。

今回の必携品は、帽子、手袋、レイン上下、ライト、携帯電話とバッテリー、長ズボンまたはタイツ、ホイッスル、エマージェンシーブランケット、お湯に対応できる給水ボトル、保温用の上着でした。必携品にはなっていませんでしたが、参加賞に入っていたフードコンテナと折りたたみスプーンが推奨品になっていました。

レースが始まってわかったことですが、寒すぎるので水は凍ってしまうことから給水はお湯のみで、食べ物はおかゆやスープ、パスタなどが中心です。そのため、ボトル(保温ポットや耐熱容器等)やフードコンテナが必要なのです。参加賞はたくさんあり、どれもすぐに使えそうなものばかりで充実していると感じました。

レース当日(50km)

標高は高いものの気温はさほど低くならず、日中で10度位、最初のレースのスタート時間である午前3時でもマイナス2度位で、これでも例年よりはかなり寒い方だということです。寒さ対策をあれこれ考えましたが、日本で冬に低山でトレランの練習をする時の装備とほぼ変わらない対応で乗り切れました。高度4000mの吹雪は寒かったですが、先日出場した野辺山でのレースの方が環境としては過酷だったような気がします。他のメンバーが行った4500m付近では雪が積もっていて、下りが怖かったと聞きました。コースによっては、アイゼンがあった方が良かったのかもしれません。

私が出場した50kmは、朝6時にスタート、途中に5箇所の関門と4箇所のエイドがあり、夜の9時がフィニッシュ時間となります。標高差は1000m程度なのですが、そもそものスタートからして息苦しいため、ジョグペースで走っても呼吸が辛くなります。走って走れないわけではありませんが、長続きはせず、スピードが落ちた途端に高山病特有の症状、頭痛、吐き気、めまい、胃腸障害等が一度にやってくるため、体の声を聞きながらひたすら同じぺースで動き続けるようにしていきました。

それでも、上り坂などはやはり苦しいわけで、集中力も続かなくなりコースを2回もロストしてしまいました。コースにはカテゴリー毎に色分けされたリボンが設置されているのですが、風が強くて角度によっては見えなくなっていたり、岩陰や木に巻きついていたりするため、集中して探し続けないと見逃してしまうことがあります。日が落ちて暗くなってからは、反射テープが小さくて見えにくいため、なお一層、道を探しながら進むことが多くなりました。

日本人は私1人だけだったのですが、レースの途中で一緒になった選手達が話しかけてくれて、拙い英語でコミュニケーションを交わせたことがとても励みになりました。特に道をロストした時や、夜道のコースを探しながら進んだ時は言葉は通じなくても気持ちが一つになっていた気がします。

スタート直後は標高3500m 付近までは道路を登り、最初のエイドに着く頃に夜が明けて、モルゲンロートに輝く山並みが美しく見えました。そこからトレイルに入り、パンダが発見されたという森の中で四姑娘山を見上げながら川沿いのハイキングコースに向かいます。ホーストレッキングの通路になっていたため、何度も馬の隊列に道を譲り、落し物を踏まないよう泥と石ころや木の根っこのトレイルを進んでいきます。公園に入ると木道と階段の繰り返しで、観光客の列に並びながら歩いたり止まったりしながらのんびりと景色を楽しみました。

コースの後半は、4000mまでの急登を一気に登り、稜線に出ます。日隆の街を取り囲む山道で、町並みを見下ろしながらどこまでも続く登山道をひたすら進みました。コースレイアウトは、プログラムの案内と配布されたコースマップ、そして実際のエイドの位置や距離が異なっていたためペース配分が予測通りにいかず、関門時間がとても不安でした。山を降りてから最後に3kmのロードの下りという表示も嘘でしっかり上らされ、また、どんなに進んでも「あと2km」という応援の声が何度も繰り返されるのです。結果としては貯金を使い果たし、最終関門7分前になんとかフィニッシュ出来ました。

完走賞は長袖のパーカーとトロフィーです。トロフィーには名前と完走タイムを刻印してくれました。インスタントの火鍋が振る舞われていましたが、身体中が雪で濡れ冷えてしまったのでそのままホテルに直行しました。ホテルは、床暖房が完備されており、シャワーも暖かいお湯がちゃんと出て、近代的で清潔な所だったのでとても良かったです。チベットだからとあまり期待していなかったのですが、ヨーロッパやアメリカ等に行った時よりも快適だと感じました。

レース後は、成都にてパンダ、四川料理を満喫

レースの翌日に、大会が用意してくれたシャトルバスで成都まで戻ることになっていました。集合時間に受付をして、間もなく点呼があったものの、寒い駐車場で立ったままバスの到着を待つことになりました。段取りが悪く、まるで罰ゲームのような時間を過ごしながら中国人はこんなものだと聞かされましたが、なんとも困ったものです。ここで待たされた選手達にとって、参加賞にもらったニット帽がとても役立っていました。そういえば、事前の問い合わせにも、いつもかなり時間がかかっていました。大陸では、大らかな気持ちで過ごす覚悟が必要なようです。

成都に到着後、パンダ公園や四川オペラを観て、麻婆豆腐に代表される四川料理を堪能し、足裏マッサージのおまけ付きで観光も満喫しました。

アフターレースの楽しみがあるのも、エントリーする際には重要な要素だと思います。物価が安いのでお小遣いが少なくて済みますし、航空会社を上手に選べば旅費もかなり抑えられます。国内でロングレースに出場すると大きな出費が必要ですが、UTMSは、日本から安近短で参加できるワールドレースとして、なかなか充実した体験が出来ると思います。

高度順応に時間をかけて、少しでも気持ちよく走ることができれば、距離が長く標高の高いカテゴリーにチャレンジするこ2017年11月27日とができるのではないでしょうか。そのためのトレーニングを重ねるのも今までのトレランとは違った楽しみになるかもしれません。言葉が通じないこと、山から無事に帰ることまで含め、体力とルートの確保をしておくこと、リスクマネジメントについては今更言うまでもありませんが、その準備もしっかりした上で素晴らしいコースを楽しめる方が増えるといいですね。