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🏃🏻‍♂️ 瀬戸際のレース:2025年 Kaga Spa Trail Endurance 100 by UTMB における運営破綻に関するレポート

※本レポートは、2025年6月28日時点のインターネット上の情報をベースに、Google Gemini の Deep Research 機能を使って情報収集したものに、GO ASIA TRAIL 側で編集を加えたものになります。

序論:日本で最も暑い日に裏切られた約束

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左:想像していたレース 右:実際のレース

2025年6月21日から22日にかけて開催された「Kaga Spa Trail Endurance 100 by UTMB®」は、単なるトレイルランニングレースではありませんでした。これは、世界最高峰のトレイルランニングサーキットであるUTMB®ワールドシリーズが日本で初めて開催する公式イベントであり、日本のトレイルランニング界にとって歴史的なマイルストーンとなるはずでした。石川県加賀市の歴史ある山中温泉を舞台に、世界クラスの国際標準レースが約束され、能登半島地震後の地域振興の起爆剤としても大きな期待が寄せられていました。

その期待を裏付けるように、イベントには43カ国から2,848人のランナーが集結し、そのうち33%にあたる928人が海外からの参加者でした。中国のトップ選手であるTAO LUO(UTMBインデックス:886)をはじめとするエリート選手も多数参加し、大会は華々しい国際色に彩られていました 。このグローバルな注目が、後に続く惨事の目撃者を世界中に広げることになりました。

しかし、この壮大なビジョンは、過酷な現実と衝突します。レース当日、山中温泉の気温は37℃に達し、日本で最も暑い地点として記録されました。この記録的な猛暑の中、組織的な運営の失敗が連鎖し、前代未聞の事態へと発展しました。特に100kmの部では、完走率が40%を下回るという衝撃的な結果となり、多くのランナーがリタイアを余儀なくされました。この問題は、香港メディアをはじめとする海外メディアでは大きく報じられたものの、日本の国内メディアではほとんど報道されていません。

本報告書が論証するのは、このKaga Spa Trail by UTMBの悲劇的な失敗が、単なる不運や状況の産物ではなかったという事実です。それは、長年にわたり日本国内で「スパルタン(質実剛健)」なレース運営で知られてきたローカルオーガナイザー、パワースポーツ(OSJ)のミニマリスト的でハードコアな運営哲学と、UTMBというグローバルブランドが参加者に保証すべき安全とサポートの基準との間に存在する、根本的かつ未解決の対立が引き起こした必然的な結果でした。この対立が、極端な気象条件と疑わしい事前計画によって増幅され、大惨事を招いたのです。

第1章:大失敗の解剖学 - あるレースウィークエンドの崩壊

本章では、公式レースデータと参加者の痛切な証言を組み合わせ、イベント崩壊の過程を時系列かつテーマ別に再構築し、混乱の全体像を鮮明に描き出します。

1.1 るつぼ:極度の暑さの中の容赦ないコース
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このレースの悲劇は、その土台となるコース設定と気象条件から始まっていました。コースは、もともと「ヤバ中(ヤバい山中)」の異名で知られるほど過酷な「OSJ山中温泉トレイルレース」を発展させたものでした。UTMBブランドを冠した新バージョンはさらに過酷さを増しており、100kmの部(実際には約105km)は累積標高6,100mという驚異的なスペックを誇りました 。コースにはロープが設置された急登やテクニカルな下り、そして絶え間なく続く小刻みなアップダウンが含まれていました 。

この容赦ないコースに、予測可能な「地獄」が加わりました。レース当日の6月21日は夏至にあたり、日照時間が最も長い日でした 。そして、山中温泉では気温37℃という記録的な猛暑が観測されたのです 。この極端な暑さは突発的なものではなく、日本のこの地域で6月下旬にレースを開催する以上、十分に予見可能なリスクでした。

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そしてレース開始直後から、問題の兆候は現れます。狭いシングルトラックでは大規模な「渋滞」が発生し、ランナーたちは30分以上にわたって断続的に停止を余儀なくされました。このロジスティクスの見落としは、ランナーたちのペース配分や水分補給戦略を序盤から狂わせ、危険な高温下での滞在時間を不必要に引き延ばす結果となりました。

1.2 崩壊する最前線:組織的なエイドステーションの不備
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公式のランナーズガイドやレース詳細では、「十分に補給されたエイドステーション」が約束されていました 。そこには水、スポーツドリンク、コーラ、果物、食事などが用意されているはずでした 。本項では、その約束がいかにして反故にされたかを体系的に検証します。参加者のブログやSNSの報告によると、エイドステーションの不備は連鎖的に発生しました。

  • AS2 大内 (17km地点):ここで提供されるはずだったバナナが全くなかったと報告されています。これは、後のより深刻な問題の前兆でした。
  • AS3 九谷ダム (26km地点):ここで壊滅的な供給不足が発生しました。複数の参加者が、ランナーズガイドの豊富なメニューとは裏腹に、「水のみ」か、あっても「ハッピーターンがあった」程度だったと証言しています。ここは序盤の重要な補給拠点であり、カロリー補給が絶望的となったことで、多くのランナーが精神的・肉体的に打ちのめされ、ここでリタイアを決意しました 。
  • 広範囲にわたる問題:他のエイドでも、提供されたコーラが生ぬるかったり、カレーライスが塩辛すぎたり、スイカは要求して初めて配られるなど、単なる物資不足だけでなく、質の低い管理体制が浮き彫りになりました。

さらに、48km地点から65km地点までのエイドステーション間には、約17kmもの給水ポイントのない区間が存在しました。この極度の暑さの中で、これほど長い距離を給水なしで進むことは極めて危険であり、ランナーたちは必死に水分を節約せざるを得ず、広範囲にわたる脱水症状や熱中症関連の問題を引き起こしました。

この一連の失敗は、単なるミスではなく、組織的な崩壊でした。それは、ランナーと主催者の間に存在する基本的な信頼関係を根底から覆すものでした。エイドステーションは単なる補給地点ではなく、ランナーにとっての生命線であり、心理的な支えです。過酷なセクションを乗り越えた先に空っぽのエイドステーションが待っているという光景は、ランナーに「組織は信頼できない、自分は完全に見捨てられた」という絶望感を与えます 。AS3で多くのランナーがリタイアした背景には、肉体的な限界だけでなく、この精神的な打撃が大きく影響していたことは間違いありません。

1.3 ロジスティクスの麻痺:ランナー輸送の混乱
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ロジスティクスの問題は、レース前から始まっていました。参加者はレース前日、高温の中でシャトルバスを30分以上待たされるという状況に直面していました 。

しかし、最も深刻だったのは、リタイア(DNF)したランナーへの対応でした。主催者の「注意義務(Duty of Care)」が完全に放棄されたのです。脱水症状と疲労でリタイアを決断したランナーたちは、その後、長時間にわたって放置されました。

  • 45km地点のチェックポイントでは、リタイアしたランナーたちが輸送車を1時間20分以上も待ち続けました。
  • 輸送用の車両は、22人乗り1台、7人乗り2台、11人乗り1台と、リタイア者の数に対して全く不十分であり、膨大な数のランナーが避難を待つことになりました。
  • 一部のランナーは、夜9時10分になってもまだ輸送を待っていました。

さらに、一部のスタッフは、リタイアを検討しているランナーに対し、「夜になると、ここから先はゴールまで引き返せない」と強調し、不安を煽ったと報告されています。これは、ランナーをリタイアに追い込みながら、その後のサポートを怠るという、極めて無責任な対応でした。

この一連の出来事は、失敗が連鎖する「カスケード効果」を示しています。まず、コースの渋滞がランナーを遅らせ、最も暑い時間帯に彼らを晒しました。これにより水分とカロリーの需要が高まりましたが、彼らがたどり着いたエイドステーションは致命的に物資が不足していました 。これが大量のDNFを引き起こし、その結果、不十分なDNF輸送システム が完全に麻痺するという、失敗の連鎖が完成したのです。これは、個別の問題ではなく、統合された危機管理計画が完全に欠如していたことを示しています。

1.4 人への影響:記録的なDNF率

この運営上の大失敗がもたらした人的被害は、公式のDNF(途中棄権)率に明確に表れています。UTMB Liveのデータによると、その数字は衝撃的です 。

  • KagaSpa100:出走者1,164人、DNF709人、完走者455人。DNF率:60.9%
  • KagaSpa50:出走者902人、DNF250人、完走者652人。DNF率:27.7%
  • KagaSpa20:出走者471人、DNF2人、完走者469人。DNF率:0.4%

100kmの部における60.9%という異常なDNF率は、単に暑さやコースの難易度だけでは説明できません。この数字は、組織的な運営の失敗がもたらした直接的かつ定量的な結果です。

50kmの部のDNF率がそれに比べて低く、20kmの部ではほぼ皆無であることは、ランナーがコースと崩壊したサポートシステムに長時間晒されればされるほど、リタイアを余儀なくされる可能性が高まったことを示唆しています。

参加者の証言からも、DNFの原因が単なる肉体的疲労だけでなく、補給物資の欠如や空のエイドステーションを目の当たりにしたことによる精神的打撃であったことが確認されています 。

表1:約束と現実 - 100kmコースにおけるエイドステーションの補給状況

以下の表は、公式資料でランナーに約束された補給内容と、実際に現場で報告された内容との間の深刻な乖離を視覚的かつ定量的に示しています。これはロジスティクス崩壊の確固たる証拠であり、高いDNF率をランナーの準備不足のみに帰する主張に反論するものです。

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表1:約束と現実 - 100kmコースにおけるエイドステーションの補給状況

第2章:根本原因の分析 - レース哲学の衝突

本章では、運営の失敗が単なる無能さによるものではなく、ローカルオーガナイザーと彼らが代表するグローバルブランドとの間に存在する、根深い哲学的な対立の兆候であったことを論じます。

2.1 「OSJクオリティ」:スパルタンレースの伝統
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本大会の運営を担当したのは、有限会社パワースポーツであり、同社が主催する「OSJトレイルランニングシリーズ」は日本のトレイルランニング界で長年の歴史を持っています。他のOSJ主催レース(新城、王滝、奥久慈など)に参加したランナーたちのレビューから、「OSJクオリティ」と呼ばれる独特の運営哲学が浮かび上がってきます。

  • 極めて過酷なコース設定:コースは意図的に厳しく設計されており、公称距離よりも長いことが多く、膨大な累積標高を誇ります 。ある参加者は「ドS感満載」と表現しています 。
  • 最小限のサポート:エイドステーションは補給が乏しいことで知られ、しばしば水のみの提供です。ランナーはほぼ完全に自給自足であることが期待されます。「このコースは挑戦だ、乗り越えてみろ」という姿勢で、「作為的な感動」は用意されていないと評されています。
  • 不正確な情報:コース上の距離表示や案内が不正確なことが頻繁にあります。
  • 低価格、質素な運営:このスパルタンな体験と引き換えに、参加費は他の主要な大会に比べて安価に設定されています。

今回のKaga Spa Trailでは、このOSJの哲学がそのまま反映されていました。過酷なコース 、空っぽのエイドステーション、そしてランナーに極度の自己責任を求める姿勢です。レースディレクターが謝罪声明の中で、「旧OSJ山中温泉トレイルランニングレースに不慣れなランナーにとっては、予想以上に厳しいコンディションだったかもしれません」と述べたことは、この運営思想が根底にあったことを間接的に認めるものです。

2.2 UTMBの責務:グローバルスタンダードの約束
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一方、UTMBワールドシリーズのブランドイメージは、OSJのそれとは対極にあります。それは「最高品質基準」を掲げるプレミアムなグローバルサーキットであり、参加することはシャモニーで開催されるファイナルへの「探求(quest)」の一部と位置づけられています。

UTMBワールドシリーズの公式レギュレーションは、そのブランドが保証する基準を明確に定義しています 。

  • 「半自給自足」であり「放置」ではない:ルールは「半自給自足(semi-autonomy)」を、ランナーがエイドステーション「間」で必携装備を携帯することと定義しています。これは、主催者が信頼でき、補給が約束されたエイドステーションを提供することを明確な前提としています。「エイドステーションは、その場で消費される飲み物と食べ物を提供する」という一文は、主催者の契約上の義務です。
  • 注意義務(Duty of Care):レギュレーションには医療支援や緊急時の手順が詳述されており、ランナーの安全に対する組織の強い責任が示唆されています。主催者の役割は「イベント」を管理することであり、ランナーが管理するのは「個人的な」問題(疲労、小さな傷など)です。水の不足は「イベント」の失敗であり、「個人的な」問題ではありません。
  • 世界的な一貫性:ランニングストーンやUTMBインデックスといったシステム全体が、タイからヨーロッパ、そして今回の日本に至るまで、すべてのイベントで一貫した信頼性の高いレース基準が保たれていることを前提としています。
2.3 和解の失敗:国内モデルをグローバルフランチャイズに持ち込む

加賀での大惨事は、OSJが自社の国内向け、低コスト、ミニマリストモデルから、UTMBが要求する高サポート、高安全、プレミアムモデルへの移行に失敗した直接的な結果であったと結論づけられます。彼らは本質的に、OSJスタイルのレースにUTMBのロゴを貼り付けただけだったのです。

この哲学の衝突は、いくつかの点で明白です。

第一に、空っぽのエイドステーションは、OSJのミニマリスト哲学がUTMBイベントに受け入れがたい形で適用された最も顕著な例です。

第二に、DNFランナー輸送の混乱は、「自己責任」の考え方が危機管理にまで拡大され、UTMBが暗黙のうちに負うべき注意義務を完全に放棄したことを示しています。

第三に、スポンサー不足と資金難が根本原因であった可能性も考えられます。この仮説は、運営上の手抜きに対する具体的な経済的説明を提供します。OSJは伝統的に低コストのレース運営で知られています 。一方で、UTMBのフランチャイズ料は高額であると推測され、UTMB基準を満たすためのコスト(豊富なエイド、堅牢な医療体制、大規模な輸送計画)はOSJの従来の運営予算をはるかに上回ります。

もしスポンサー収入がこのギャップを埋めるのに不十分だった場合、主催者はUTMBのブランドを掲げながらも、財政的な圧力から低コストでミニマリストな「OSJクオリティ」の運営に回帰せざるを得なかったのかもしれません。これは、失敗が哲学的なものだけでなく、経済的なものでもあった可能性を示唆しています。

この事態は、フランチャイズによるブランド毀損の典型的なケーススタディと言えます。UTMBは、シャモニーの威信と卓越した運営によって築き上げられた貴重なブランドを、そのブランド価値と根本的に相容れない運営哲学を持つローカルパートナーにライセンス供与しました。

ゼッケンに付されたUTMBのロゴは、主催者が満たすつもりのなかった、あるいは満たすことのできなかった品質と安全への期待を生み出しました。これはUTMBワールドシリーズ全体の信頼性を損なうものです。もし「by UTMB」を冠するレースがこれほど杜撰に運営されうるのであれば、そのブランドは一体何を保証するのでしょうか。

この文化的な衝突の予測可能性は、UTMB側のパートナーシッププロセスにおける重大な失敗、すなわちデューデリジェンス(適正評価)と監督の欠如を指摘します。UTMB本部は、OSJの過去の運営実績を十分に調査したのでしょうか。また、グローバル基準の遵守を徹底させるための十分なトレーニングと監督を提供したのでしょうか。それとも、パートナーシップはより放任的なライセンス中心の取り決めだったのでしょうか。加賀での失敗は、UTMBのグローバル展開戦略における弱点を示唆しており、運営の完全性よりも市場での存在感を優先した可能性を提起します。

第3章:余波と再生への道

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本章では、危機への対応を分析し、すべての利害関係者に対する具体的な提言を行い、イベントの将来的な存続可能性を評価します。

3.1 公式対応と是正措置

レースディレクターの滝川次郎氏は、公式声明を発表し、補給物資の不足について謝罪しました。この謝罪は評価されるべきですが、「特に旧OSJのレースに不慣れなランナーにとっては…」という表現は、責任の一部を転嫁していると受け取られかねない側面も持ち合わせています。また、「UTMBグローバルチーム」によるレース後調査に言及している点は、二段階の危機対応体制を示唆しています。

さらに、100kmの部のDNFランナー全員に対し、翌年の同大会もしくは2025年9月に開催される Malaysia Ultra-Trail by UTMB への無料招待がオファーされました。これは、信頼回復に向けた重要かつ必要なジェスチャーです。しかし、ある参加者が「自分のDNFはエイドの問題ではなく怪我が原因なので申し訳ない」とコメントしているように 、この一律の対応が必ずしもすべての状況に合致しているわけではないことも示しています。

UTMB本部の役割としては、「UTMBグローバルチーム」による「レース後調査」が挙げられます。これは、UTMB本部が損害を評価し、パートナーシップの将来を決定するための重要なデータ収集活動と見なすことができます。

3.2 海外からの視点:国際的な反発と評判の失墜

この事件は、国際的なランニングコミュニティから厳しい批判を浴びました。香港メディアや参加者のブログでは、ローカルな運営組織の失敗と、それをUTMBブランドの下で許したUTMB本部双方に対する怒りが表明されています。この一件は、UTMBブランドに大きな汚点を残しました。

特筆すべきは、この国際的な大問題が、広範な事前プロモーション 1とは対照的に、日本の国内スポーツメディアでは事実上全く報道されていないという点です。この「報道の空白」は、国内と海外での問題認識の深刻なギャップを示しています。

3.3 信頼を再構築し、未来を確保するための提言

このイベントが存続するためには、根本的な変革が不可欠です。

主催者(パワースポーツ/OSJ)への提言:

  1. 根本的な哲学の転換:OSJは、本イベントに関して、自社のミニマリスト的な「OSJクオリティ」を公にかつ明確に放棄し、UTMBのグローバルスタンダードを絶対的な最低基準として受け入れることを約束する必要があります。
  2. 運営の全面的な見直し:ロジスティクス、サプライチェーン管理、リスク評価の完全かつ透明な見直しが求められます。この計画はUTMBグローバルと共同で策定・承認されるべきであり、タイやヨーロッパの成功事例をベンチマークとすべきです。
  3. 注意義務の徹底:DNFランナーの管理計画は完全に再構築され、リタイアしたすべてのランナーに対する迅速、安全、かつ尊厳ある輸送に焦点を当てるべきです。これは、Western States 100のようなトップクラスのレースの基準を参考にすべきです。

UTMBワールドシリーズへの提言:

  1. パートナー監督体制の強化:UTMBは、すべての新規フランチャイズイベントに対して、より厳格で実践的な監督プロトコルを導入しなければなりません。これには、UTMBグローバルスタッフによるレース前の運営監査を義務付け、基準が単なる書類上のものではなく、実際に実行されていることを確認するプロセスが含まれるべきです。
  2. ブランド基準の徹底:UTMBは、ランナーの安全とブランドの完全性を守るため、基準を満たさないパートナーシップを終了させることも含め、ブランド基準を断固として執行する準備が必要です。UTMB本部が加賀での失敗について公式声明を発表し、新たな監督措置の概要を説明することが不可欠です。
  3. 透明性のあるコミュニケーション:UTMBは、レース後調査の結果と、加賀および世界中の他のイベントで再発防止のために講じられている具体的な措置について、率先して情報を開示すべきです。

大会の将来に向けて:イベントの存続は、国際的なランニングコミュニティの信頼を回復できるかどうかにかかっています。2026年のレースは、極めて厳しい監視の目に晒されるでしょう。また、開催時期の変更も真剣に検討されるべきです。6月下旬の日本で累積標高6100mの100kmレースを開催することは、本質的に高いリスクを伴います。より涼しい月への日程変更は、最も効果的なリスク軽減策となるでしょう。

結論:スポーツのグローバル化への警鐘

Kaga Spa Trail by UTMBの失敗は、単一のイベントの惨事にとどまりません。それは、組織文化の衝突、予測可能なリスクに対する不十分な計画、そしてグローバルなフランチャイザーによる監督の失敗の可能性から生まれた、組織的な破綻でした。

この事件は、スポーツのグローバル化に対する強力な警鐘です。UTMBやIronmanのようなスポーツブランドがフランチャイズを通じて世界的に拡大する際、現場での一貫した運営の卓越性を確保できなければ、そのブランドの中核的な約束を希薄化させるリスクを負います。加賀での事件は、ロゴを貼るだけでは不十分であり、運営のDNAそのものが成功裏に移植されなければならないことを示しています。

最終的に、ブランドの有無にかかわらず、あらゆるレースの究極的な評価基準は、参加者の安全と幸福に対するコミットメントです。2025年のKaga Spa Trailにおいて、この最も基本的な注意義務は破られました。その信頼を再構築するには、謝罪や無料招待以上のものが必要です。それは、哲学と実践における、深く、そして目に見える形での変革を要求するのです。

編集後記(主観)

生成AIを活用することで、私の主観だけなく、第三者の目線で情報を収集してくれるので、あまりバイアスがなく情報が整理できたのではないかと思います。イラストに関しては、Gemini の Imagen 3 を使って描いています。昨今は、ChatGPT がジブリ風の絵を描けるようになったということで話題にはなったが、みんな使うので個人的に飽きました。

前回の記事から大会側から発表があり、DNF をした人に対して来年開催予定の加賀スパもしくは9月のマレーシアで開催される by UTMB 大会に無料招待するという救済策を発表。これは OSJ 側なのか、UTMB Group 側の計らいなのかわかりませんが、個人的にはマレーシアよりも、近隣の TransJeju by UTMB(韓国)や TransLantau by UTMB(香港)のほうが良かったのではと思います。

参加されたランナーの中には、「返金のほうが良かった」というご意見も散見されるのですが、返金するだけの体力が運営会社側にはないと思うので、次回大会もしくは別レースの無料招待でクロージングしたかったのだと思う。

ただ、応募猶予があまりなくて、7月上旬までにランナーは回答する必要があるので、果たしてどれだけのランナーが応募するのかは気になるところです。少なくとも、海外からの参加者は来年の加賀スパはもう走りたくないとは考えているでしょう。

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引用元:https://kagaspa.utmb.world/ja

また、大会ディレクターであるパワースポーツ代表の滝川次郎氏から謝罪のメッセージがあったものの、上の黄色でマークした部分が責任転嫁している感じがして、最初にこの文言を読んだときはモヤっとしましたね。少なくとも、このメッセージを公開する前に、AI使って添削すれば、この文言は出なかったとは思いますね。

来年どうなるのか気になるところではあるのですが、時期変更は必須だろうし、人数も運営会社の規模を考えると2500人もの巨大レースをできるほどの体制もないし、資金もないと思う。UTMB Group は新たなパートナーを探したほうがよいと思います。そもそも、UTMB が求めている運用スタイルと、OSJ がこれまでにやってきた運営スタイルが大きく異なり、ミスマッチしています。これらが今回のレポートを通じて見えてきたのではないかと思います。

何にしても、UTMB Group が大会参加者よりアンケートが配布されるようなので、その結果を見て、また私からなにか意見することがあれば記事にしたいと思います。

長文となりましたが、ありがとうございます。

引用文献

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  2. Kaga Spa Trail Endurance 100 by UTMB will Bring the Trail Running World to the Japanese Ancient Mountains and Heritage Hot Springs, 6月 28, 2025にアクセス、 https://utmb.world/news/announcement-Kaga-Spa-Trail-Endurance-100
  3. UTMB® World Series - Japan - Sportzhub, 6月 28, 2025にアクセス、 https://www.sportzhub.com/article/utmb-world-series--japan.html
  4. Kaga Spa Trail Endurance 100 by UTMB - UTMB World Series, 6月 28, 2025にアクセス、 https://kagaspa.utmb.world/
  5. Kaga Spa Trail Endurance 100 by UTMB が酷評の嵐の件 |GO ASIA TRAIL - note, 6月 28, 2025にアクセス、 https://note.com/goasiatrail/n/nf1c2456f77ee
  6. Kagaspa Trail Endurance 100 Japan 2025 - UTMB Live, 6月 28, 2025にアクセス、 https://live.utmb.world/kagaspatrail/2025
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  28. Chiangmai Thailand by UTMB, 6月 28, 2025にアクセス、 https://chiangmai.utmb.world/
  29. RACE REGULATIONS AND REGISTRATIONS CONDITIONS - HOKA Val d'Aran by UTMB®, 6月 28, 2025にアクセス、 https://valdaran.utmb.world/race/regulations
  30. KAGA SPAネタは終わりません | あやたろうのトレラン奮闘記, 6月 28, 2025にアクセス、 https://ameblo.jp/zozomuayataro/entry-12912932449.html
  31. 「マラソン」に関するプレスリリース一覧 - PR TIMES, 6月 28, 2025にアクセス、 https://prtimes.jp/topics/keywords/%E3%83%9E%E3%83%A9%E3%82%BD%E3%83%B3
  32. 2025 Participant Guide - Western States Endurance Run, 6月 28, 2025にアクセス、 https://www.wser.org/participant-guide/